妻がソシャゲに5万円を課金していた

ブレソルという魔境

妻は今、週刊少年ジャンプで掲載されていた「ブリーチ」という漫画にどはまりしている。 

ネット界隈では「なん・・・だ・・・と・・」といった言葉が先行し、ネタにされることが多いマンガではあるが、細かい矛盾なんかを気にせず勢いに任せれば、魅力的なキャラは多いし、ストーリーの流れもしっかりしているし、個人的には面白いマンガである。

BLEACH―ブリーチ― 74 (ジャンプコミックス)

BLEACH―ブリーチ― 74 (ジャンプコミックス)

 

その流れで、このブリーチのソーシャルゲーム(ソシャゲ)である「ブリーチ-Brave Souls-」にのめり込んでいったのはごくごく自然な流れだったのだろう。

おそらくはコーラを飲んだらゲップが出るくらい確実に。

 

 

妻はもともと趣味が少ない人間だったので、妻がソシャゲにはまるのは決して悪いことではなく、むしろ良いことだと僕自身も思っていた。それに、僕も妻と一緒に楽しむために付き合い程度にこのゲームをたしなんでいた。

 

そんなある日、妻にとって一大ニュースがやってきた。妻が大好きなキャラである「平子真子(ひらこしんじ)」というキャラのガチャがやってきたのである。これには妻も色めきたった。そんな妻が今までに貯めてきた霊玉というガチャを引くためのアイテムを惜しみなく平子のために注ぎ込むのもまた自然な流れだったのだと思う。

ブレソル_平子真子_知属性ガチャ

(この真ん中のキャラが平子真子である)

 

このゲームはいつもガチャで引けるキャラが変わるタイミングが16時なので、平子ガチャが始まる日の朝はいつになく妻は元気で「早く平子使いたいよ。ああ、真子かわいいよ。」とウキウキしていた。そんな妻を微笑ましくみながら、「仕事が終わるのが楽しみだね。」と返事をして、お互いに出勤していった。

 

が、しかし、夜の19時頃に妻から来たLINEで「ごめん、今日は食欲がない…」というメッセージで私は全てを悟った。「ああ、可哀想に。平子が出なかったのね」と。

しかし、その次のメッセージにはさすがに度肝を抜かれた。

 

「5万円も課金してしまったよ…」

 

ブレソルで1万円課金するとだいたい20回ガチャが引けるので、妻は100回分のガチャを課金したことになる。もともと集めていた霊玉を含めると、おそらく150回近くはガチャを回したのだろう。それでも目的のキャラは出なかったのである。

 

正直に言えば、我が家は共働き世帯なので5万円が単発で失われた程度であれば、それほど家計には大きな問題はないし、妻が自分の小遣いの範囲内で使ったお金に関して僕はとやかく言うつもりがない。

 

しかし、5万円課金しても欲しいキャラがでなかったという事実に意気消沈し、この世の終わりかのような顔をしている妻を見ていると、「1%のキャラはこんなに当たらないものなのか…」という疑問がふつふつと湧いてきた。

 

そこで、「150回のガチャを引いて出現率1%のキャラを引ける確率を計算してみた。

 

1%のキャラをゲットできる確率は?

高校の数学で習う簡単な確率の問題ではあるが、

1からガチャを引いた時にお目当てのキャラ以外のキャラしかでなかった時の確率を引けば、ガチャを引いた回数でお目当てのキャラが少なくとも1枚は出る確率が分かる。

 

計算式は至ってシンプル

お目当てのキャラがでる確率=1―0.99^(ガチャ回数)

 

その計算結果がこれである。

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ガチャを150回引いても出現率1%のキャラが出る確率はおよそ80%である。逆に言えば、5人に1人は今回の妻のように涙をのむ結果に終わるということである。

「1%の確率で100回」と聞くと、1回ぐらいは当たりそうではあるが、実際には60%程度しかない。こんな風に考えると意外とお目当てのキャラを獲得するのは難しそうである。

よく世の中を分かった風のませた中高生が「学校の勉強をしたって将来役に立たないじゃん」などと言うことがあるけれど、こんな風にしっかりと確率の勉強をしていれば身近なガチャを理解するのにも役立つのである。

高校の数学の先生もこうした身近な例を題材にして授業で教えればいいのではないかと思う。「壺の中から赤い石を取り出す確率は?」といった問題よりも学生は興味を持ってくれるはずである。

 

サンクコスト・バイアスまみれのガチャ

ちなみに、妻に5万円を課金してガチャを引いていた時の心境を聞いてみると、

 

「これだけ課金したのに平子がでないまま終わるなんてできない。」

 

というものだったそうだ。

これはいわゆる「サンクコスト・バイアス」と言われるものである。

サンクコストとは、すでに使ってしまって回収することのできないコストのことで、それまで使ってしまったコストを惜しんで無駄な投資をさらにしてしまう、といったものがサンクコスト・バイアスである。

 

ガチャであれば、これまでに課金or使ってしまった玉はもうどんなことをしても取り戻すことができない。そのため、合理的に考えるのであれば、「今課金しようとしている1万円で最も嬉しい経験をするためにはガチャを引くことが最適か?他によい使い道はないか?」と考えなければならないが、妻のように「これまで投資してきた課金額がもったいない」などと意味のないことを考えて、さらに損失を膨らませてしまうのである。

 

このサンクコスト・バイアスはビジネスでも過剰な投資が生じる原因としてよく挙げられるため、妻にはこの経験を仕事で活かして、サンクコスト・バイアスにかからないようにしっかりと合理的に考えることを学んでほしいと切に願う。