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小説レビュー:伊坂幸太郎『死神の浮力』

死神の浮力
 
<あらすじ>
一年前、1人の少女が殺された。犯人として逮捕されたのは近所に住む27歳の男性、本城崇。彼は証拠不十分により一審で無罪判決を受けるが、被害者の両親・山野辺夫妻は本城が犯人だということを知っていた—。人生をかけて娘の仇を討つ決心をした山野辺夫妻の前に、死神の千葉が現れる。
 
音楽をこよなく愛し、対象の人間を7日間調査し、その死について可否の判定を下すことをしている死神・千葉が主人公の伊坂幸太郎の『死神シリーズ』の第二弾。

 

 
結論から言えば、期待はずれも良いとこ。
前作の『死神の精度 (文春文庫)』が非常に面白かったために、今回も面白いのではないかと期待して、わざわざハードカバー版で買ったのに、強引な物語の進め方が目に付き、面白いと思えなかった。


 
 
死神の精度 (文春文庫)短編集だった前作は、「人間界」の常識がなく、また寿命もないために人間とは全く異なる時間感覚をもつ主人公・千葉とその調査対象の人間とのどこかずれた会話を楽しむことができた。

また、その時間感覚のなさを利用して、物語の最後にはバラバラに見えた一つ一つの話が、長い時間を伴って一つの物語へと収斂していく様におもわず「おぉーー」と1人でうなってしまった。

それぐらい、前作の『死神の精度 (文春文庫)』は面白かった。

しかし、第二弾の『死神の浮力』にはそういった醍醐味がほとんど感じられなかった。

また、犯人を追いつめる段階でも千葉の文字通り人間離れした身体能力に頼り切っているため、展開があまりにも強引、いわゆるご都合主義感がぷんぷん薫る香ばしい作品となってしまっている。

個人的には、前作の『死神の精度 (文春文庫)』は一読の価値があるが、前作を呼んで「千葉ファン」になった人であっても、本作はおすすめしない。

本屋では結構、熱心にプロモーションされているけれど、
わざわざ『死神の浮力』を読まなくても、もっと面白い本はゴロゴロある。